『いのち』誌(昭和128月号)に記載されたものを抜粋させていただきました。

 

自然の寶石            谷口雅春

夏の朝露は

その一つ一つが寶石

その寶石の中に

全世界が宿ってゐる。

その澄んだ瞳から蒼空が物云ひ

生命がその神祕を囁いてゐる。

太陽がさしのぼれば

そのひとつひとつが

燦爛として亂舞する。

 

花咲く丘             谷口雅春

花さく丘に私は登って行った。

眞夏にも蝶々がゐる。

こゝは常住の花の世界だ。

蝶々がつがってゐる。

黄金蟲もすがってゐる。

おゝ、不可思議の世界だ、

燕が鰈のやうにひらりと空に翻る

雀が矢のやうに

また弾丸のやうに飛ぶ、

その飛んで行く先を見れば

お伽噺の繪にあるやうな雀の巢がある。

そこに小雀が親雀の運んでくる餌を待ってゐる。