京都アニメで悲惨な事件があって久しい。

 私はあの辺りをかなり詳しく散策したことがあるので地形はよくわかる、また宇治川がすぐ南にあるので、水害とかで昔から苦しめられた地域でもある。あの「太閤堰」も直ぐ近くにある。

 ちょうど菟道稚郎子御陵(うじのわきいらつこ/うぢのわきいらつこ)の横に遺跡として残っている。

 ただ、宇治川をはさんで南側にも巨大な太閤堰があったことが知らされている。

 

 京都の難しく読みづらい言葉として一口(いもあらい)という言葉がありますが、宇治川が氾濫するとこの地域の南側がすぐに巨椋池がありますが、その一帯が湿地帯となり、住めるような地域でもなかった。ただ現在の京阪宇治線付近になると標高も高くなり、街道も発達して、往時から行き来があったのではないかと推測出来る。一口はその巨椋池の西側にあり、「忌みを祓う」という語源ではないかという説は信憑性がある。湿地帯というのは毎年川が氾濫し、洪水だけではなく、疫病が流行り、そうしたことを神仏の助けを借りて、人々は信仰を篤くしていったのではないか。(”いもあらい”とパソコンのキーボ-ドで打てば「一口」と出て来ます)

 

 この六地蔵にも「小野篁」というこの世とあの世を行き来した人物が来て、六像を祀ったとされている。何故祀ったのかというと、沢山の人々が洪水とかで亡くなって、それを祀る為ではないかと思います。(小野篁に関しては六道珍皇寺や千本ゑんま寺など行かれたらその人物像に触れることが出来ます)

 

 この地域は六地蔵の大善寺や黄檗寺など有名な寺院も多いが、昔はこの地域は藤原家の菩提寺が沢山あった。

 六地蔵、木幡、黄檗と広範囲にある。現在、宮内庁の「宇治陵」の管轄には

藤原温子/藤原穏子/藤原安子/藤原遵子/藤原(女皇)子/藤原懐子/藤原詮子/藤原彰子/藤原超子/ 藤原(女成)子/藤原妍子/藤原威子/藤原嬉子/藤原寛子/藤原歓子/藤原茂子/藤原苡子/藤原生子/敦実親王/敦道親王(以上陵墓制札による)

  

 藤原冬嗣/藤原基経/藤原時平/藤原兼家/藤原道隆/藤原道長/藤原頼通/藤原師実

 

 木幡の近くには上記(8人)の藤原家の人が祀られているが、どの人がどの場所であるかがはっきりとわからない。ただ、宇治橋からすれば宇治川が北側に水が流れており、東側が山になっている。その為標高も高くなり、宇治陵も大きくなっている。道元もこの木幡で生れたとされている。(山間に生家といわれている場所があります)

 

 さて、京都には「四神相応」という言葉があるが、宇治は京都からすれば南側にあたる。

【北】玄武 背後に高い山

【東】青龍 東に清き流れ

【南】朱雀 広く開けた湿地帯

【西】白虎 大きな道が続く

 

その南側の朱雀である地域は巨椋池があり、湿地帯でもあった。
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宇治(うじ)は菟道(うぢ)が本来の語源である。「うち」とは「中(うち)」であり、宇治別格本山を行かれたらわかりますが、宇治川に北側は開けていますが、その三方は山に囲まれている、己がその中心に座しているような心境になる。

 目を閉じてみれば、まるで極楽浄土の世界觀があったのではないか。それが「宇治鳳凰堂」でないかと思っています。

 

また、橋姫伝説を御存知であろう、あの「丑の刻参り」で有名である。これには全く真逆な二説がありますが、宇治橋の守り神であるのは確かであります。

 

◆『平家物語』による橋姫 日本伝承大鑑より抜粋

ある公家の娘が嫉妬のあまり貴船神社へ詣でて鬼になることを願った。そして7日目に貴船の神託があり、姿を変えて宇治川に21日間浸かれば鬼と化すという。そこで女は髪を松脂で固めて5つの角を作り、顔には朱、身体に丹を塗り、頭に鉄輪をかぶってその3本の足に松明をつけ、さらに両端に火をつけた松明を口にくわえて京の南へと走り、宇治川に浸かって生きながら鬼となったという。そして念願通り、人々を取り殺したという。さらに室町期に後日談が作られ、この橋姫は安倍晴明によって封じ込められ、源頼光四天王の渡辺綱らによって退治された。そして祀ってくれるならば京を守護すると言って宇治川に身を投げて龍神となったという。このあたりの伝承や創作から謡曲『鉄輪』が作られ、丑の刻参りに繋がっていったと見るべきである。

 

◆『山城国風土記 逸文』による橋姫 日本伝承大鑑より抜粋

つわりがひどい橋姫は、夫に海草を採ってきて欲しいと頼む。そして夫が海辺で笛を吹いていると、美しい龍神が現れて婿に迎えてしまう。そして3年経ってようやく橋姫は夫の所在を尋ね当てる。夫は竜宮の火で作られたものを食べることを嫌い、老女の家に食事に来るという。そこで二人は再会するが、泣く泣く別れることになる。その後、夫は橋姫の元に戻ってきた。

このときに夫が詠んだとされる歌が、詠み人知らずとして『古今和歌集』に収められている。「さむしろに衣かたしき今宵もや 我をまつらん宇治の橋姫」

この悲劇のヒロインの流れを汲むのが『源氏物語』第四十五帖【橋姫】に登場する大君と中の君であると推察できるだろう。

 

 

これを読んで頂きました皆様、極楽浄土と餓鬼の世界、つまり六道の地蔵菩薩の六分身をいう。生前の行為の善悪のいかんによって,人は死後に,地獄,畜生,餓鬼,修羅,人,天という六道の境涯を輪廻,転生するといわれる。そうした世界觀がこの宇治や伏見という地域に根付いていたのではないかと推測しています。極樂の世界にあるなかで、人の心の醜い處、地獄や畜生の世界を現実に持った人。本来そんなものは「無い」とはいえど、「現象」世界では醜い世界が蔓延している所があります。

 

今回の京都アニメでは若い命が失われています。犯人は自分の「心」だけを唱え、それを勝手に正しいと解釈して犯行に及んだとされています。今回の選挙に関連しても同じことがいえます「安倍政権」を自分が気に入らないからという理由で「愛国掲示板」に書き込みをしていました。ああ、この人は世間知らずのボンボンである。少し間違えると「犯人」の世界觀と同一になってしまう。

 

一言云いたい、安倍政権ではなく「日本」を護ってくれる政党であろう。こんな人には「日本觀」が缺如している。どうしたら「日本が救われるのか」谷口雅春先生の書物を讀むと、そのあたりのことがわかるのですが、とても残念であります。そういう人は「片手落ちの日本觀」なのです。その片方が無くなってしまうと、間違った解釈になってしまうのであります。

 

大善寺とは

京都市伏見区桃山町西町にある浄土宗の寺、大善寺の通称。境内地蔵堂に等身の石地蔵立像を安置する。もとは六体あったものか。小野篁(おののたかむら)が冥土で生身の地蔵菩薩を拝し、娑婆に帰って一木で六体の地蔵尊像を刻み、ここに安置したと伝える。また、大善寺付近の地名。京都市と宇治市とにまたがる。


宇治陵は一号(遥拝所)から37号まであります。二回程巡拝しました。

https://umap.openstreetmap.fr/ja/map/map_164538#15/34.9249/135.8089