帝国図書館が所蔵していた発売頒布禁止された図書の概要については前稿で解説したため省略するが、「禁安」は安寧秩序紊乱との理由で、「禁風」は風俗壊乱との理由で、大正12年以降に処分を受けた図書のうち、帝国図書館が内務省から受入れたとされる。参考文献⑤の著者の岡田によれば「大正震災の折、内務省書庫が焼失して発禁本を失ったため、当局が不穏な世情の思想調査に困惑した事例を理由に、発禁本といえども1 部は上野図書館に交付して厳重に保管せしめ、万一の際の用に供すべきことを説明して同省の了解を得た。爾来上野へ交付後のものはもとより、交付以前に行政処分を受けたものについても正式に上野図書館に交付されることになった。」
とあり、当時の帝国図書館長から内務省警保局長宛の文書やその返信も残さ。また、現在確認できる資料の多くには、内務省の函号や禁止年月日の書き込みがなされている他、警視庁の印や、まれには「正本」の書き込みがあるものもある。
この資料群については、書名や禁止年月日等を手書きした帝国図書館時代の事務用目録が残されている。この目録に部編名「安寧ノ部」、「風俗ノ部」以外のタイトル等はないが、参考文献① に『発禁図書函号目録』とあるため、以下このタイトルを使用する。それによれば、帝国図書館は、受け入れた発禁本を以下のように整理した。
表1.「禁安」「禁風」の内訳 | |||||
部編名 | 受領年月日 | 函号 | 番号 | 件数 |
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安寧ノ部
| 昭和12.6.17 | 禁安1 | 1 ~ 197 | 197 |
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昭和12.6.22 | 禁安1 | 198~310 | 113 |
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昭和12.7.15 | 禁安1 | 311~586 | 276 |
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昭和12.7.17 | 禁安1 | 587~778 | 192 |
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昭和14.8.16 | 禁安1 | 779~780 | 2 |
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昭和14.8.16 | 禁安4 | 781~831 | 51 |
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昭和15.8.20 | 禁安5 | 832~955 | 124 |
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昭和17.7.30 | 禁安7 | 956~1080 | 125 |
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風俗ノ部
| 昭和12.9.15 | 禁風1 | 1 ~302 | 302 |
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昭和14.8.16 | 禁風4 | 303~326 | 24 |
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昭和15.8.20 | 禁風5 | 327~337 | 11 |
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昭和17.7.30 | 禁風7 | 338~ 359 | 22 |
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